まとめ
- 新型コロナウイルスの感染拡大の防止の観点で日本と世界の国々が異なっている点は監視や罰則などの強制力の有無。
- 日本は諸外国のような厳しい外出制限は行わず、あくまで自粛のお願いをするというマイルドな手法を用いている。
- このようなある行動をひとびとに選択するよう求める際に強制するのではなく、さりげなく働きかけ、気付いてもらう手法の1つとして「ナッジ理論」というものがある。
ナッジ理論とは?
- 「ナッジ理論」とは、2017年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者のリチャード・セイラー博士と、ハーバード大学のキャス・サンスティーン教授が、2008年に提唱した概念です。
- nudge:(訳)ひじで軽く突く。(行動経済学上)対象者に選択の余地を残しながらも、より良い方向に誘導する手法。
ナッジ理論の使用例
- トイレにある張り紙「いつも綺麗にご利用頂きましてありがとうございます」
他の人は皆このトイレを綺麗に使っている、と思わせることでトイレを綺麗に保つ - 厚生労働省のがん検診受診率向上施策
がん検診対象者に対して、ただ説明するのではなく、「行動に至るきっかけの提供」を目的とした、より効果的な取り組みとして、行動経済学の「ナッジ(nudge)(※)理論」に基づいた好事例を紹介するものです。
参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04373.html
考察
今回の新型コロナウイルス感染症防止の取り組みで厳罰な規制の上で都市封鎖を行う「ロックダウン」という言葉が一躍世に広まった。現状の日本ではどのような施策になるのだろうと恐々とした人も多いだろうが、実際に発出されたのは法的な拘束力を持たない「お願いベース」での要請だ。諸外国の前例を見ていた人にとっては少し不安が残るような行動施策だっただろう。
しかし、今回日本政府がとった「お願いベース」での自粛要請は単なるお願いではなく、行動経済学に基づく行動指針だった。
ナッジ理論は我々が行動を起こす時に暗に選択肢を提示することを意味している。例えば多くの定食屋で導入している「今日のおすすめ」も「何を食べようか」と消費者が考える手間を省き、店の一番売りたいものを提供することが出来るようなシステムになっている。ナッジ理論を利用し、消費者の選択肢を導いているということが出来るだろう。
見えない不安に苛まれて行動指針が見えないからこそ、暗に「家にいなさい」という選択肢を与えているのだろう。「阿吽の呼吸」や「間合い」を大事にする武術に精通してきた日本人だからこそ、今回の暗に提示される方法が板に合っているのかも知れない。