ヨミカツ

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和牛の未来について

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今日はみんな大好き、私も大好きお肉の話をしたいと思います。

 

日本で食べられる牛肉の高級ブランドと言えば、松坂牛、神戸牛、近江牛米沢牛などでしょう。これらの牛は“和牛”と呼ばれ、国内外で多くの人気があります。

 

これらの美味しいお肉をどのようにして守っていくか、が今回の話の中心になります。

 

「和牛」の定義とは

・和牛とは明治以降に在来種に外来種を交配して品種改良した肉専用種のこと。

・黒毛和牛、褐毛(あかげ)和牛、日本短角種無角和種、の4品種で、黒毛がそのほとんどを占める。

・4種の純粋種か4品種の交雑種のみが「和牛」と呼ばれる

・日本で生まれ育っていることも「和牛」の条件である。

・優良な遺伝子をもつ種雄牛を作るのに相当の時間や餌代などのコストがかかる、

・中には数十億円の価値の遺伝子を持つ牛も存在する。

 

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世界に広がる和牛

日本は1991年4月にアメリカとの間で牛肉の輸入自由化が始まりました。これに伴い、日本からアメリカに和牛を輸出出来れば、世界に和牛の美味しさをもっと広めることが出来ると考えた日本人がいました。

 

北海道在住の92歳、武田正吾さんです。

 

武田さんは日本で初めてアメリカに和牛を輸出し、日本の和牛を世界に広めた第一人者です。1995年に45頭の雌と7頭の雄、1997年に55頭の雌と7頭の雄を輸出し、和牛が世界に広がるきっかけを作りました。

 

しかし、武田さんが和牛をアメリカに輸出すると決めると周囲から反対の声が挙がり、心無い言葉をかけられることも多かったようです。

 

武田さんは「日本の乳牛や豚、鶏なども他の国から種をもらったもの。種をもらって改良するけど、自分の国のおいしい和牛は外に出さない。それって筋が通らない。みんなでいいものを作って、分け合えばいいじゃない」と述べています。

 

美味しいものを食べるには試行錯誤が必須

私個人の意見を述べると、前述の武田さんの「みんなでいいものを作って、分け合えばいいじゃない」という意見は正しいと思います。

 

食は国境を越え、食べた人を笑顔にするエンターテイメントだと考えています。よって、みんなで美味しいものを食べるために、多くの人が試行錯誤するのは必然であると考えています。

 

なぜ和牛に関してはそれが許されないのか不思議に感じました。

 

和牛の海外流出防止

みんなでいいものを作って、分け合おうという武田さんの思いとは反対に、現在の日本では和牛の海外への持ち出しが禁じられる動きがあります。

国は海外流出を防ぐため、受精卵などの遺伝資源の持ち出しに対して、刑事罰を導入する方針を固めました。今現在輸出が容認されているのは、和牛の肉です。

流出を防止しようとしているのは、受精卵や精液などの和牛の「遺伝資源」。和牛の肉は、海外で人気が高まり、輸出が増えています。

2018年には247億円にのぼり、3年間で2倍以上に急増しました。

仮に遺伝資源が流出して、和牛の性質を持ったが牛が、日本以外で生産されると、輸出に打撃を受けるおそれがあります。

出典:和牛流出に刑事罰!なぜ? |サクサク経済Q&A| NHK NEWS WEB

 

また、政府は2020年3月3日に和牛の遺伝子資源の海外流出を防ぐための法案を閣議決定しました。

政府は3日、和牛の遺伝資源(受精卵と精液)の海外流出を防ぐための関連2法案を閣議決定した。新たに制定する家畜遺伝資源不正競争防止法案は、遺伝資源を不正に海外に持ち出した場合、10年以下の懲役または最大1000万円の罰金を科す。不正利用に対する差し止め請求権も認め、国内外で人気が高い和牛の保護を徹底する。

 家畜改良増殖法改正案は、遺伝資源の流通管理を厳格化するため、畜産関係者らに対し譲渡の履歴を記録するよう義務付ける。中国に遺伝資源が大量に持ち出されそうになる事件が2018年に発覚。畜産農家らから対策を求める声が強まり、農林水産省が法改正の検討を進めていた。

出典:和牛保護2法案を閣議決定 海外流出、罰金1000万円:時事ドットコム

実際に和牛の遺伝子資源を中国に持ち出そうとして大阪府の男性2名を家畜伝染病予防法(輸出検査)違反と関税法違反容疑で逮捕したというニュースも報道されています。

出典:和牛の受精卵を中国へ 無検査持ち出し容疑、男ら逮捕:朝日新聞デジタル

 

和牛の遺伝子資源取締りに対する姿勢は、今後ますます厳しくなっていくことが予想されます。

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 豊かな日本の自然によって育った和牛

和牛の遺伝子資源を海外に流出した際に起こり得る懸念事項の1つとして、海外で和牛の生産が可能になってしまうと、日本の和牛が本来もつブランド力が低下してしまうのではないか?という点があります。

 

諸外国の立場に立って考えると、これまで高い費用を払い和牛の肉を手に入れていたものの、和牛の遺伝子資源を手に入れることが可能になるとで、いつでも新鮮で美味しい和牛の肉を大量に手に入れることが可能になり、大幅なコストの削減に繋がることになるでしょう。さらに、育てた和牛の肉を販売することによってプラスの収益を手に入れることも可能になるこも予想されます。

 

確かに安価な和牛が世界に広まってしまうと、同じブランド牛の遺伝子を持った肉を高価な費用を支払い手に入れる人が少なくなることがあるかも知れません。

 

しかし、私は海外で和牛が広まっても日本の和牛のブランドは落ちないと考えています。日本の和牛は日本の豊かな自然が生み出した水、空気によって育てられて来ました。それぞれの和牛にあった適切な飼育方法を考慮していった結果今の日本の和牛が誕生したのです。

 

和牛の遺伝子が海外に流出したとしても、日本と全く同じ環境で牛を育てることは不可能だと私は考えています。もちろん和牛が持つ遺伝子情報によって、ある程度レベルの高い肉牛を育てることは可能になりますが、日本の和牛と海外の和牛ではどうしても詰められない差が生じると思っています。そして海外の和牛ではどうしても詰められない日本の和牛との差が、日本の和牛にとって圧倒的なブランドとなり得ると考えています。

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和牛の遺伝子資源を守ることは和牛を守ることに繋がるか

もし、今後の日本で大災害が生じたり、牛に関する疫病が流行し、和牛の多くの命が断たれてしまった場合、日本の和牛はその伝統を後世に残すことが出来るのでしょうか。1頭残らず和牛が日本から消えてしまうということは考えにくいですが、今後何が起きるか分かりません。

 

日本の和牛の遺伝子が海外で脈々と受け継がれていたら、和牛がもし絶滅の危機に瀕したとしてもまた和牛のブランドを立て直すことは可能なのではないかな?と考えました。もちろん前述したように海外の和牛は日本で生まれた和牛と少し異なる気質を持っているかも知れません。しかし、本来日本で生まれた和牛だからこそ日本での生活にも再度、適応してくれると思います。

 

和牛の遺伝子資源を一切外部に持ち出すことを禁じてしまったら、和牛が危機に瀕した時に救う術がありません。こういう意味も含めて和牛の遺伝子資源を守ることは果たして本当に日本の和牛を守ることに繋がるのか、疑問に感じてしまいました。

 

前武田さんの勇気ある行動で世界に広まった和牛の遺伝子資源を元に、海外で育てられた牛たちは「Wagyu」と呼ばれ、多くの国で親しまれるようになりました。Wagyuと和牛、読み方は同じでもその性質は似て非なるものの扱いを受けています。昨今の和牛を取り巻く環境を見て、世界中に子孫を持つことになった昔の和牛は何を思うのでしょうか。

 

参考:追跡メイド・イン・ジャパン 和牛編)和牛、もはやWagyu 肉も受精卵も、海外で拡散:朝日新聞デジタル